M&A用語集
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NDA(エヌ・ディー・エー)
Non-Disclosure Agreement(ノンディスクロージャー・アグリーメント)の略。秘密保持契約書のこと。
CA(シーエー:Confidential Agreement)と言われることもある。
案件目的以外に非公開の情報を第三者に開示してはならない義務を負う契約書のこと。最近は、M&A以外でも様々な取引検討協議前に結ばれるため、ここ10年ほどで、広く知れ渡るようになった。
両者が署名をする合意形式であったり、情報受領者(M&Aの場合、主に買い手)が、情報提供者(M&Aの場合、主に売り手)に提出し、情報提供者が受領する差し入れ形式のある。
案件によって異なるため、状況を踏まえて最適なNDAを取り決めることが求められる。M&Aに限らず、事業提携など、企業間の情報授受の際に交わされる。
【参考コラム】
秘密保持契約書(NDA)に関するポイント -
SPA(エス・ピー・エー)
Share Purchase Agreement(シェア・パーパス・アグリーメント)の略。
株式譲渡契約書のこと。
売主が保有する対象会社の株式を、対象会社の新たな株主となる買い手に当該株式を譲渡するために双方で締結する最終契約書のこと。
法的拘束力をもち、当事者間でM&A取引を実行するために必要な事項が規定されている正式な契約書。
買収価格、前提条件、表明保証や補償に関する取り決めが規定され、M&A取引において最も重要な契約書となる。 -
Teaser(ティーザー)
売却対象の会社及び事業を1枚~3枚程度に要約した会社概要。
M&AアドバイザーやM&A仲介会社が、最初にNDA前の段階での案件紹介をする際に持って来る。
目的は、買い手に対して初期的な興味を探るために使われる。
ノンネームシートとも呼ばれる。「Tease」は、「じらす」という意味で、一部だけ紹介し詳細を伝えないことで関心を持たせようとする広告手法らしい。
アドバイザーによっては、更に詳細情報を求めると、NDA締結を要求されるケースもある。 -
エクセキューション(Execution)
M&Aにおける一連の手続き等を実行及び管理することをいう。
案件の開始から案件完了に至るまでの様々な手続きを実施していくことをエクセキューションと呼ぶことが多い。
一方、案件自体の創出を行うことをオリジネーションという。 -
価格調整(Price Adjustment)
最終契約書(DA)締結時点とクロージング時点で、売却会社の株式価値が変動することが考えられる。
その期間が1か月以内とか、短い場合、変動は考えにくいので、通常は価格調整という面倒な手続きをしないこともあるが、その期間が長くなると、流石に売却会社の価値が変動することも考えられる。
実務的に正確なことを言うと、DA締結時点では、価格を合意することになるが、その価格算定は、それよりも前の時点で作成された財務諸表・事業計画をもとになされているので、その算定基準時点とクロージング時点の間の価格を調整するということになる。
基本的には、売り手/買い手ともどちらに有利かというと、理論的にはニュートラルとなる。つまり、DAで合意した譲渡価格に対して、クロージング時点までに株式価値が増加すれば、売り手は、買い手より追加的に現金を受け取ることができ、株式価値が減少すれば、売り手は売却代金の一部を買い手に返金することになる。
具体的な調整方法は、こちらのM&Aコラムに説明しているので、ご覧ください。
【参考コラム】
二次入札~クロージングまで -
企業価値(EV = Enterprise Value)
エンタープライズ・バリューと言われ、投資家や株主から見た企業全体の価値をさす。
具体的には、株式価値+純有利子負債額+少数株主持分のこと。事業価値+非事業用資産額も企業価値となる。
略してEV(イー・ブイ)と呼ばれる。
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クロージング(Closing)
M&A案件において、案件の完了を意味する。
具体的には、金銭対価のM&Aの場合、買い手が売り手に買収対価となる資金を支払い、買収対象企業(事業)を譲り受けることを言う。 -
コンフリクト(Conflict)
争い・衝突の意味ですが、M&Aでは、Conflict of Interest(利益相反)の略語として使われ、業界内ではコンフリとしばしば略される。
M&Aでは、M&Aアドバイザーだけでなく、会計・税務・法務アドバイザーがクライアントから任用される際、各アドバイザリーが利益相反を有していないか確認する社内手続き(コンフリクトチェック、コンフリチェック)がある。
仮に、任用予定のアドバイザーが既に別件でクライアントの取引相手当事者にアドバイスする立場にある際、コンフリ状態となるため、クライアントはその事実を考慮して、当該アドバイザーの任用有無を判断する必要がある。
一案件で買い手及び売り手より同時に手数料を受け取るM&A仲介会社は、真にコンフリ状態にあると言え、厳密には一方に有利なアドバイスを行うことが、他方の相手の不利益につながるため、潜在的な問題を抱えている可能性があると言える。 -
最終契約書(Definitive Agreement)
Definitive Agreement(ディフィニティブ・アグリーメント)とも言われ、DA(ディー・エー)と略されることもある。
M&Aにおける最後の契約書。上記、DA(ディー・エー)の説明を参照。 -
表明保証(Representations & Warranties)
表明保証は、英語で「Representations & Warranties」と表され、「レプワラ」と略して言われる。
M&Aの最終契約書(DA)で登場する、重要な条項の1つであり、主に売り手が開示した情報に対して、真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証するという内容のこと。
何故、DAでこんなことをするかというと、仮にDA締結後に表明保証違反が発覚した場合、①買い手側がM&Aを取りやめたり、②補償請求ができたりする根拠になるという効果がある。
①については、流石にクロージング後に取りやめは不可なので、あくまでもDA締結~クロージングまでの間だけ有効。
②については、クロージング後、売り手と合意した一定期間、補償請求ができる、という内容になる。
DDでは、情報の非対称性(売り手の方が当然知っている状態)が存在するため、表明保証を入れる背景として、買い手と売り手でM&Aに関するリスクを分担させる効果があるためとされる。
また、売り手側に情報開示の促進や情報の非対称性の解消効果も言われる。つまり、売り手としては、情報を確り開示すれば、その中で開示したリスクがクロージング後に顕在化しても、そのリスクを既知の状態で買収したことになり、買い手としては補償請求できない。従って、売り手に「ネガティブ情報」の開示を促す効果もある。
DDにおいて、途中で買い手がドロップし、情報を流用されるリスクを懸念して、売り手が開示したがらないことがあるが、信用力のある買い手であれば、NDAを締結していること、また開示しなかったことで、クロージング後に買い手から補償請求を受けるリスクを考えると、売り手としては、開示する方が良いという整理になる。
また、表明保証にて、情報によっては、売主の「知る限り」「知り得る限り」という限定文言を入れかどうかも交渉対象になる。この文言がなければ、本当に売主が知らなかったリスクも、すべて補償しなければならないため、重要となります。