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株式交換とTOBの違い(2/2) ~株式交換は、買収プレミアムが低い!?~

M&Aについて
今日は、前回の続きで、株式交換によるプレミアムについて、コラムを書きたい。
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意外と知られていないのが、株式交換のプレミアムは、TOBよりも低いという事実。数値上では、安く買収ができます。
経験則では、TOBプレミアムが、平均40-50%とすると、株式交換のプレミアムは平均20-30%程度。データを見てみましょう。

(A) TOBプレミアム:42.5%

(B) 株式交換のプレミアム:19.4% 


(補足)
(A)TOBの対象期間は、2024年の1年間。ディスカウントTOBは除き、マジョリティ取得を目的としたTOBであり、成立した案件を対象(計85件)にしている。プレミアムは、TOB価格を前営業日の終値と比較したプレミアムとしている。

(B)株式交換の対象期間は、2020年1月~2024年12月までの5年間、計33件を対象。持株会社化を目的とした株式交換は対象外とし、あくまでも完全子会社化(買収)を目的とした株式交換事例のみを対象。プレミアムは、売り手FAが算出した市場株価法のレンジの中央値をベースに、合意した株式交換比率に含まれるプレミアムを算出。

ご覧頂くと分かる通り、プレミアムとしては、大きな開きがある。そのGapが発生する理由について、少し考えてみたい。


①キャピタルゲイン課税の有無

前に説明した通り、この相違には、税金分による影響が大きいものと考える。

TOBの場合は、強制的に対象会社株式を売却させられ、その譲渡益部分(売却価格-取得原価)に対して、キャピタルゲイン課税がかかる、対象会社が上場会社であり、売主が個人の一般投資家とすると、約20%を納税することになる。法人であれば、法人税相当額分が納税対象。

一方で、株式交換の場合、基本的には適格優遇税制が適用されるため、売主が保有する対象会社株式は、親会社の株式に振り替わるだけで、その親会社株式を売却しない限り、納税は発生しない。

仮にプレミアム分をキャピタルゲインと考えると(取得価額=公表前の時価)、税引後の実質プレミアムは、TOB⇒34%(=42.5%×0.8)、株式交換⇒19.4%。但し、株式交換の場合、キャッシュ化されていないので、Apple to Appleの比較はできないが、TOBによる強制売却によって、納税したとしても、TOBの方がプレミアムは高水準となる。

また、TOBの方は件数が多く、株式交換は親会社や大株主により実施されるケースが多い(株主総会で承認を得られる可能性が高い)ことから、株式交換のプレミアムは低く抑えられている可能性もある。

欧米では、ハイブリッド型TOBやハイブリッド型株式交換、つまり対価が「現金と親会社株式」の組み合わせのケースも多く、プレミアムはTOB水準とほぼ同じとなっている。

なお、株式交換発表後に対象会社株価がプレミアム分だけ上がったところで、売却することもできたり、株式交換によるシナジー効果を期待して将来の親会社株価の値上がり期待のため、保有を継続出来たり、対象会社株主にとっての選択肢は増えるため、そのオプション価値も存在する。

但し、これらを踏まえても、正直なところ株式交換のプレミアムは、低く抑えられている印象はある。


②親会社による完全子会社化
 
 2020年~2024年の5年間における株式交換事例は、計33件。うち、20件は50%超を保有する親会社による株式交換。つまり、既にマジョリティ(経営権)を保有している株主による買収である。

 通常、経営権取得にあたっては、コントロールプレミアムを支払う、それがTOBプレミアムという一般的な解釈だが、既にコントロールを握っている場合については、特段解釈はないと理解している。

 TOBの場合、少数株主の締め出しコスト(仮に市場で買い上げたとしても、全少数株主から買い取る時間コストや買い上げにともない「需要>供給」による株価の上昇等)、50%超を保有する親会社によるTOB事例をもとにすると、プレミアムを支払う事が一般的と言える。従って、経営権取得以外にも過半数を保有している子会社の完全子会社化には同様のプレミアムを払うことになる。

 一方で、株式交換の場合、需給に関係なく、会社法の中で、株主総会での特別決議を経れば、完全子会社化が可能。従って、確実に賛成を得られるものの、少数株主からも賛同を得るために、「気持ち」プレミアムを乗せる程度の印象。ロジックとしては、親会社として、算定した株式交換比率を上回る比率での賛同は、株主への説明責任が果たせないという理由から、高い比率で株式を子会社株主に発行できないというロジックもある。

 とはいえ、プレミアムを考えるなら、親会社=市場株価、子会社=DCFで算出された株式価値 で比率を算定するのが自然であるが、事実そうなっていないことも多い。つまり、親会社・子会社とも市場株価、或いはDCF法でそれぞれ比率を算出しており、算定内容に所謂コントロールプレミアムが考慮されていないという事実もある。これらロジックの整理は必要と思われる。

 
③プレミアム水準が分かりにくい。

何せ株式交換のプレミアム水準が分かりづらい。交換比率の比較によるところであり、一般の株主からするとぱっと見て、「?」であり、ピンと来ない。この事情もあり、反対意見を強く出せないのではとも思う。


以上、色々と思うことはあるものの、これを是正するというより、この事情を逆手にとって、買収者は使えるならTOBではなく、株式交換を使って買収することも、買収金額を安く抑える一つの手段と考えて、選択肢にいれるのも良いのではと考える。

 
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