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M&A仲介の問題点

コラム
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国内中小企業のM&Aを調べる中で、実はM&A仲介とM&Aアドバイザリーサービス(FA)との違いを理解せず、M&A仲介会社を利用しているケースが多いという事実が分かってきたので、改めて整理します。
東洋経済の記事も参考になります↓
M&A仲介会社「承継で大活況」の知られざる実像 ~雇用や技術、地域経済を守る一方で不満の声も~

1. M&A仲介とは?

M&A仲介者とは、M&Aにおける買い手と売り手両方アドバイザリー契約を締結し、中立な立場でM&Aを円滑に進めるための調整役・仲介者のこと。聞こえは良いが、実際にM&Aを進める中では、いくつかの問題が発生するので、3.以降でご紹介したい。


2. FAとは?

Financial Advisor(フィナンシャルアドバイザリー:財務アドバイザー)の略で、M&Aにおいては、売り手もしくは買い手のどちらか一方アドバイザリー契約を締結し、締結したクライアントの利益最大化のために相手と価格交渉をする助言者。


3. M&A仲介の何が問題か?

M&A仲介において、不利となるのは、主に売り手です。以下、②の要因が大きいです。もちろん、買い手にとっても、①や③は不利ですが、②だけは売り手に対してのみ、不利になります。

① 利益相反の問題

両側から手数料を取るお手盛り取引であり、かつM&Aの売り手・買い手となると、どちらかの利益を優先させると直接相手側の利益を毀損する利益相反の関係にあることが問題と言われている。

↓政治家の河野さんもM&A仲介会社の仲介取引は、利益相反の可能性が高いと指摘しています。
衆議院議員 河野太郎公式サイト 中小企業のM&A

FA経験を前提に実務的なところを言うと、価格が最も交渉で焦点が当たるケースにおいて、顧客(買い手 or 売り手)を前に聞かれた際、両者にとって完全に公平で誠実な助言ができるかというと、正直無理だと思います。更に、この状況下で両者が満足する価格で合意するというのも想定しづらいです。

従って、案件が進み、大詰めを迎えた中で、仮に仲介会社が売り手に良いアドバイスをしても、反対側の買い手にもっと都合の良いアドバイスをしていると疑って、斜めで見てしまうことも多々あると思います。

② 売り手不利なプロセス 

国内中小企業のM&Aでは、売り手である中小企業オーナーにとって、会社売却は最初で最後の場合が多く、一方で買い手は経験している場合が多いことから、経験値の面でも売り手不利なケースが多いです。

その上、基本合意時にM&A仲介者に強制的に相対取引にされてしまい売り手の交渉力がなくなるプロセスを強いられることは、売り手にとってM&A仲介者を利用する一番大きなデメリットとなります。

具体的には、売り手は一定期間、買い手に独占交渉権を付与して、他の買い手候補と会話できない状況になります。相対取引になった瞬間から、売り手は交渉力を失い買い手の思うがままに最終契約をさせられる可能性があります

③ 案件成約バイアス

仲介会社の手数料体系は、完全成功報酬型です(着手金、中間金を設定している会社もある)。案件が成約して初めて収益化となります。また、担当者も年俸制で案件の成約数・その手数料額で年俸が決まります。

従って、プロセスが進めば進むほど、案件成約のバイアスが掛かります。基本合意以降に案件を停止するのは、勇気がいります。従って、何としてでも売り手に合意してもらう、そのために言い包めること含めて、あれこれ売り手を説得にかかることも多々あります。また、時間的プレッシャーもかけて、他の選択肢を考えないように判断を迫ることもあります。


4. 何故、M&A仲介会社が必要とされるか。

このような問題があるにも関わらず、何故M&A仲介案件が伸びているかというと、後継者問題を抱えている中小企業経営者にとって、自分の利益を優先させるのではなく、会社・従業員・取引先・地域社会に迷惑をかけず、また、気持ちよく譲り受けてくれる会社に引き渡したい。従って、売却価格は相手の言い値で良いという場合です。

また、買い手探しは容易ではありません。M&A仲介会社は買い手情報を多く持っており、高いマッチング力には価値があると言えます。また、買い手は1社であり、M&A仲介会社は両者を知る存在であるため、相性・協議の進め方など、円滑油の役割も大きいと思います。

高齢者の方も多く、売却後は特に贅沢な暮らしよりも静かに安定した余生を過ごしたい場合には、M&A仲介は良いのかもしれません。

この場合ですと、既に利益相反の可能性はないので、基本合意で価格を固定(但し、DDで減算項目が出れば引かれる)して、進めるので、M&A仲介も問題ないと言えます。


5. オープン型の実質相対取引がお勧め 

会社・従業員・取引先・地域社会に迷惑をかけたくないとはいえ、価格だけでなく従業員の雇用や他の条件面でしっかり交渉して良い条件で譲渡したい売り手にとっては、オークション方式か、オープン型の実質相対取引をお勧めします。

オークション方式とは、案件成約まで複数の買い手候補と並行して協議を進めるM&Aプロセスのことで、最終契約締結ぎりぎりまで、売り手は交渉力をキープできます。デメリットとしては、複数の買い手候補と協議を進めるため、負担が大きく、特に買い手による買収監査を複数社受けると、管理部門はDDの約1か月間はパンパンで、他の作業ができず、連日残業という状況になります。

なお、オークション方式では、M&A仲介会社は、すべての当事者をアドバイスすることができないので、彼らはオークション方式を推奨しません(無理やり基本合意で相対取引にさせる理由はここにあります)。従って、国内中小企業オーナーの中で、そもそもオークション方式での売却方法の存在すら知らない方も多いのも頷けます。

一方で、オープン型の実質相対取引は、2社以上からの買収監査に耐えきれない国内中小企業が多いことから、実質的には基本合意以降、相対でのM&Aプロセスを進める場合はよくあります。但し、相対取引であっても、プロセスはオープンにして、いつでも買い手候補を招聘できる状況で、M&Aプロセスを進めるやり方を指します。

利点としては、買い手には最後まで他の競合を意識してもらい、売り手の交渉力を一定程度維持することにあります。具体的なやり方としては、まずオークション方式で案件を開始し、2次以降も協議を進める買い手に対して、1次提案の選定結果を伝える際、①他の競合の合否は伝えない②何社2次に招聘しているか、社数を言わない、③2次以降も引き続きオークション方式で進める、といったところに留意します。

但し、オープン型の実質相対取引は、実際に買い手が複数いないと、あまり効果がない(買い手に対して、あたかも他の競合がいるかのように装いますが、バレやすく、信頼を失う危険もある)ので、できる限り、2社以上買い手候補を用意しておく必要があります。

もちろん、2次に進む買い手は独占交渉権の付与を要求してきますので、買い手の本気度を試す機会でもあるので、確り交渉することが良いでしょう。

なお、1次提案の際、特定の会社や買い手すべてに対して、納得いく条件がない場合、再度提出してもらうこともよくあります(そもそもオークションであれば、常識の範囲で売り手がM&Aプロセスを自由に設計できます)。

オークション方式、オープン型の実質相対取引の選択を希望する場合、売却価格だけでなく、あらゆる売却条件にあたって、売り手の利益を最大限追求することになるため、M&A仲介会社ではなく、弊社のようなFAを雇うことになります。
 

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