PMIの成功ポイント
最近は多忙を極めた為、すっかりブログから離れていました。
投資銀行時代、M&Aと言えば、FA業務のみでしたが、起業以降、案件エクセキューションだけでなく、M&AソーシングやPMI(Post Merger Integration:買収後の統合プロセス)に関与する機会が多くなっています。
今回は、PMIについて、少し触れたいと思います。初回なので、PMIの成功ポイントについて。
(1)PMIメンバー選定
有りがちな失敗パターンとして、買収完了以降で、案件メンバーがガラリと変わるケース。
M&Aに慣れた買い手で毎年M&Aチームが何件もこなす場合、買収したらおしまい、後はPMI担当や事業部にお任せ、というパターンが多いですが、まずこれでは統合プロセスはうまく行かない。反対の被買収側の立場に立てば、よくわかると思います。
例え短い期間と言えども、買収プロセスで互いの人となりが分かり、これから同じ船に乗って航行するつもりで、被買収側は覚悟しているにも関わらず、買い手側では先導役から現場の船乗りたちが一斉にチーム替えとなると、どうなるか。
最悪、買収前のDDで開示した情報もすべてリセットされ、事情も分からない人に一から教えたり、事情を分かっていない担当者に機械的に統合作業をさせられると、信頼関係を築くことができるか。被買収側からすると、クロージング日に、-10kmからマラソンをスタートさせられる気持ちでしょう。
できれば、DDの最初/途中からPMIの中心メンバーや買収後に派遣予定のメンバーを関与させ、調査に加わるとともに、被買収側のトップやキーマンとの関係作りを始めるのが理想的。事業部に近いメンバーの方が、よりビジネスの会話ができるので、望ましい。
(2)スタートダッシュ
どのPJにも共通して言えることであるが、PMIにも通じることとして「鉄は熱いうちに打て」という点。最初が肝心。様々なケースがあるが、共通する事実として1つ、買収側/被買収側という立場の違いが存在する。買い手として色々と思うことがあるが、被買収側の現場従業員は、意外と冷静に状況を見ている。もっと言うと、統合するならさっさとやって欲しい、親会社からの様々な指示もドンドン言って欲しい、と思っている従業員も多い。特に本社機能はその傾向が強い。一方で、営業・現場店舗・実際のオペレーションに関わるところは、顧客・取引先への影響を最も気にするので、PMIを進める上では、少し分けた方が良い場面がある。
いずれにせよ、被買収側で統合や改革機運が最も高まる期間は、クロージング日からの数か月間であり、いつのタイミングで買収側もそのモードを加速させることができるか。
まずは、信頼関係構築が重要と考えるのが通常ではあるが、できれば、SPA締結~クロージング日までの間もうまく活用して、キーマンとの信頼関係作りを行い、早々に100日プラン(WBS)を作成して、PMIプロセスに入っていくのが望ましい。
(3)PMIタスク
統合にあたって、色々とやることが出てくる。買い手が上場企業であれば、ガバナンス体制や連結対応、未上場であっても業績報告やマネジメント方法など、色々とやるべきことがある。
子会社として存続する場合は、連結子会社としての必要事項、将来的に合併する場合は連結子会社対応+合併受入準備という2ステップの用意が必要となる。
基本的に、被買収側への依頼事が多くなるため、被買収側のモチベーション維持も重要な課題。買収側の方が給与待遇が良ければ、合併へのインセンティブとなるが、逆の場合は、慎重な検討が必要。
信頼関係構築には、Win-winの関係が望ましいため、是非とも被買収側からの依頼を積極的に取り入れ、スピード感もって対応することが望ましい。例えば、買収者グループの方が知名度が高い場合、被買収者側の従業員の名刺に買収者グループのロゴを入れ、「●●グループ会社の一員」と入れるだけでも、営業マンが非常に喜ぶケースがある。
(4)ヒトの扱いに注意
買収側のルールに寄せることが、前提になることは、被買収側従業員は理解するが、その結果、自分が受け取っている給与に影響が生じる場合、離職率がかなり高まる。特に資格など有している従業員は、転職も容易なので、離職傾向が高くなる。基本給やボーナスの比較はどうか。ボーナスが業績連動の場合、平均での比較は危険になる。また、残業代で多く稼いでいる、子供が多く手当が厚い、子育て女性の職場環境など、手当や人事制度全般での比較が重要となる。例えば、未上場時代は、労働組合がなく、会費はなかったが、上場企業のグループ傘下に入った結果、買い手の労働組合に加入することが必須となり、毎月数千円の会費を徴収されることになり、退職する従業員が発生するなど、予期せぬ事態も生じる。給与・ボーナス・人事評価・労務管理に関しては、性急な対応は禁物で、事前に何度か説明会を開催するなど、なるべく離職するリスクを限定化する努力が必要となる。
また、被買収側の従業員のインセンティブ策として、人事交流を行うことは効き目がある。机を並べ一緒に働くことで互いの違いを肌で理解し、刺激になるので、組織の融合という意味では非常に効果がある。但し、人事交流をする前に、派遣社員の人事評価の取扱いを整理しておかないといけないので、その点は注意が必要。
(5)事業計画
PMIを進める中で、追加コストの発生(システム導入/更新)、事業の展開方針の変更、事業計画の精査など、買収時に買収価格のベースとなった事業計画の見直しをせざるを得ない状況は多々ある。特に下方修正となると、上場企業の場合は、いきなり減損リスクに晒されることになるため、慎重に検討することが必要となる。いずれにせよ、PMIタスクの遂行の中で、シナジーの定量化も取組み、できる限り、利益をかき集める努力は必要。また、モニタリングとして、KPIの設定も必要となる。
まずは、これら5つのことを念頭に、PMIに取り組むのが肝要と思います。
投資銀行時代、M&Aと言えば、FA業務のみでしたが、起業以降、案件エクセキューションだけでなく、M&AソーシングやPMI(Post Merger Integration:買収後の統合プロセス)に関与する機会が多くなっています。
今回は、PMIについて、少し触れたいと思います。初回なので、PMIの成功ポイントについて。
(1)PMIメンバー選定
有りがちな失敗パターンとして、買収完了以降で、案件メンバーがガラリと変わるケース。
M&Aに慣れた買い手で毎年M&Aチームが何件もこなす場合、買収したらおしまい、後はPMI担当や事業部にお任せ、というパターンが多いですが、まずこれでは統合プロセスはうまく行かない。反対の被買収側の立場に立てば、よくわかると思います。
例え短い期間と言えども、買収プロセスで互いの人となりが分かり、これから同じ船に乗って航行するつもりで、被買収側は覚悟しているにも関わらず、買い手側では先導役から現場の船乗りたちが一斉にチーム替えとなると、どうなるか。
最悪、買収前のDDで開示した情報もすべてリセットされ、事情も分からない人に一から教えたり、事情を分かっていない担当者に機械的に統合作業をさせられると、信頼関係を築くことができるか。被買収側からすると、クロージング日に、-10kmからマラソンをスタートさせられる気持ちでしょう。
できれば、DDの最初/途中からPMIの中心メンバーや買収後に派遣予定のメンバーを関与させ、調査に加わるとともに、被買収側のトップやキーマンとの関係作りを始めるのが理想的。事業部に近いメンバーの方が、よりビジネスの会話ができるので、望ましい。
(2)スタートダッシュ
どのPJにも共通して言えることであるが、PMIにも通じることとして「鉄は熱いうちに打て」という点。最初が肝心。様々なケースがあるが、共通する事実として1つ、買収側/被買収側という立場の違いが存在する。買い手として色々と思うことがあるが、被買収側の現場従業員は、意外と冷静に状況を見ている。もっと言うと、統合するならさっさとやって欲しい、親会社からの様々な指示もドンドン言って欲しい、と思っている従業員も多い。特に本社機能はその傾向が強い。一方で、営業・現場店舗・実際のオペレーションに関わるところは、顧客・取引先への影響を最も気にするので、PMIを進める上では、少し分けた方が良い場面がある。
いずれにせよ、被買収側で統合や改革機運が最も高まる期間は、クロージング日からの数か月間であり、いつのタイミングで買収側もそのモードを加速させることができるか。
まずは、信頼関係構築が重要と考えるのが通常ではあるが、できれば、SPA締結~クロージング日までの間もうまく活用して、キーマンとの信頼関係作りを行い、早々に100日プラン(WBS)を作成して、PMIプロセスに入っていくのが望ましい。
(3)PMIタスク
統合にあたって、色々とやることが出てくる。買い手が上場企業であれば、ガバナンス体制や連結対応、未上場であっても業績報告やマネジメント方法など、色々とやるべきことがある。
子会社として存続する場合は、連結子会社としての必要事項、将来的に合併する場合は連結子会社対応+合併受入準備という2ステップの用意が必要となる。
基本的に、被買収側への依頼事が多くなるため、被買収側のモチベーション維持も重要な課題。買収側の方が給与待遇が良ければ、合併へのインセンティブとなるが、逆の場合は、慎重な検討が必要。
信頼関係構築には、Win-winの関係が望ましいため、是非とも被買収側からの依頼を積極的に取り入れ、スピード感もって対応することが望ましい。例えば、買収者グループの方が知名度が高い場合、被買収者側の従業員の名刺に買収者グループのロゴを入れ、「●●グループ会社の一員」と入れるだけでも、営業マンが非常に喜ぶケースがある。
(4)ヒトの扱いに注意
買収側のルールに寄せることが、前提になることは、被買収側従業員は理解するが、その結果、自分が受け取っている給与に影響が生じる場合、離職率がかなり高まる。特に資格など有している従業員は、転職も容易なので、離職傾向が高くなる。基本給やボーナスの比較はどうか。ボーナスが業績連動の場合、平均での比較は危険になる。また、残業代で多く稼いでいる、子供が多く手当が厚い、子育て女性の職場環境など、手当や人事制度全般での比較が重要となる。例えば、未上場時代は、労働組合がなく、会費はなかったが、上場企業のグループ傘下に入った結果、買い手の労働組合に加入することが必須となり、毎月数千円の会費を徴収されることになり、退職する従業員が発生するなど、予期せぬ事態も生じる。給与・ボーナス・人事評価・労務管理に関しては、性急な対応は禁物で、事前に何度か説明会を開催するなど、なるべく離職するリスクを限定化する努力が必要となる。
また、被買収側の従業員のインセンティブ策として、人事交流を行うことは効き目がある。机を並べ一緒に働くことで互いの違いを肌で理解し、刺激になるので、組織の融合という意味では非常に効果がある。但し、人事交流をする前に、派遣社員の人事評価の取扱いを整理しておかないといけないので、その点は注意が必要。
(5)事業計画
PMIを進める中で、追加コストの発生(システム導入/更新)、事業の展開方針の変更、事業計画の精査など、買収時に買収価格のベースとなった事業計画の見直しをせざるを得ない状況は多々ある。特に下方修正となると、上場企業の場合は、いきなり減損リスクに晒されることになるため、慎重に検討することが必要となる。いずれにせよ、PMIタスクの遂行の中で、シナジーの定量化も取組み、できる限り、利益をかき集める努力は必要。また、モニタリングとして、KPIの設定も必要となる。
まずは、これら5つのことを念頭に、PMIに取り組むのが肝要と思います。
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