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経営統合(前編)

M&Aについて
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 今日は、経営統合について少し紹介したい。日経新聞の一面に「●●と▲▲が経営統合へ」という見出しが出ますが、一体どういうことでしょう。M&Aの一種なのか、合併や買収、売却とは異なるのか。

 経営統合とは、買収や売却とは異なるM&Aの一形態であり、2社以上の会社同士が1つの会社グループになることです。表向きは、あたかも2社以上が、対等な立場で「仲間になり、新しい会社を創ろう!」という、仲良しな経営統合に見えますが、実際は異なり、買う側・買われる側が存在するケースがほとんどです。

統合にあたっては、主導権争いや既得権益を守ろうとするバイアスもあるため、教科書的な話に留まらず、実態含め、紹介したい。


1. どうやって案件化される?

 まず、トップ同士の内々の合意から始まるケースが多いと聞いた。両者に大株主や大口顧客、その他影響力のある者(例:規制業種であれば、監督官庁)が裏で糸を操っているケース、事業悪化に伴って他社に泣きつくケース、最近ではアクティビストや望まざる株主からの攻撃回避のため、他社にヘルプをお願いするケース、会社の実情・将来性・グローバル競争力の強化など純粋に事業拡大を志向するケースなど、色々なきっかけや事情はあったものの、基本的は両トップ同士で決めて、両者少人数でチームアップ・PJ化し、経営統合に進んでいくことが多かった。

金融機関が黒子に徹して、面識のない両者がその仲介によってトップ会談がアレンジされ、劇的に経営統合へと一歩踏み出すというドラマに出てくるようなことも昔は耳にした。しかし、実際に私が経験した案件では、大手企業同士になると、業界団体や個別にトップ同士・役員同士・部門長同士など、様々なレイヤーで業界内の交流があるため、長い年月をかけて経営統合が醸成されていくパターンが多かった印象である。


2. 経営統合時の「買う側」と「買われる側」

経営統合でも、「買う側」と「買われる側」という上下の関係が出来上がる。本当の意味での「対等な統合」を経験したことがないが、記憶では、数案件、あった。何故か上下関係が出来上がるか?規模(特に時価総額)の観点から、大きい方の株主が、「対等」を容認しないから。互いの経営陣も株主から選出された代表者なので、その意思に背くわけにはいかない。

「買う側」と「買われる側」を判断するポイントは、①経営統合時の時価総額、②統合比率、③統合後の役員構成の3つで判断できます。最も分かりやすいのは、③。

ただし、統合後、新会社の役員人事は、経営統合発表時ではなく、統合比率決定時でもなく、統合される直前にシレっと役員構成が発表されることもあり、発表時点では、③は意外と判断つかない。統合後に役員選任プレスを見ると、「買う側」から取締役3名、「買われる側」から取締役2名、社外取締役が3名と言ったように、買う側の取締役が多くなる。なお、社外取締役も「買う側」出身の方が多くなったりする。

面白いことに、「対等」を見せるため、「買われる側」から「社長」を選任し、社長ポストを使ってバランスを取っているケースもよく見る。その場合、「買う側」は「会長」ポストに就くことで、実質「院政」を敷くので、経営は「買う側」が実質コントロールするケースもある。

役員構成も、会長・社長だけ基本合意のプレスリリースで発表するケースもあったり、従業員やステークホルダーのことを考え、それぞれの会社出身の取締役数を開示する例も多いので、その場合は発表時点か統合比率発表時で分かる。

なお、経営統合後、しばらくは「買う側」「買われる側」の取締役枠は固定される。日本企業では約30年経つと、経営統合後に入社した社員が取締役になるので、要約「融合」という形になり、出身母体の概念が無くなっていく。一方で、海外はそもそも従業員と経営陣が異なるので、日本のような概念は気にならない。(今後、日本企業も外部人材の取締役抜擢ケースが多くなるので、変わって行くと思います)

次に、①について、経営統合の場合、時価総額が60:40と近いケースも多く、それをもとにすると、「買う側」「買われる側」は察しが付く。但し、統合比率は、1株あたり株価だけの比較なので、統合比率を見てもピンとこない。また、発表直前だけでなく、過去に遡ると意外と均衡していたりして分かりずらく、プレス資料を見るだけでは、どっちが「買う側」か分かり辛い。

最後に、②について、これはプレス資料の算定結果を眺めると何となく見えてくる。つまり、単純に時価総額ベースの統合比率より、「買われる側」に比重がかけられている。つまり、「買われる側」にプレミアム(約15%程)を乗せていることになる。ただ、これもプレスを見ただけでは、一般の人には分からない。(「後編」で説明したい)


3. 経営統合にあたって気にするポイント

取引先等、様々なステークホルダーを気にしながらも、最も気にすることはやはり社内の従業員。但し、「実質的に」買われれる側、つまり時価総額が小さい方の経営者の方がより気にします。買う側は、交渉中にどれだけ良いことを言っても、結局経営統合して、一緒になり、時間が経つと、買われる側の従業員は、徐々に追いやられることになるのが常。(当然、「買われる側」の従業員であっても、若手の優秀な人材は評価されます)

両者の事業ポートフォリオのバランス、業界プレーヤーの少なさから消去法で統合相手が決まってしまうこともあるが、とは言え、一様に社内従業員の反応を気にかけていた。これは、経営統合に限らずですが、定性的・感覚的な要素とは言え、かなり大きなファクターとなる。

日頃のピッチや宴席の中で、例えば、業界再編の相手はどこか、という話をすると、色々な方が様々な見方を持っており、事業面は当然だが、業界交流会など横通しの繋がりをベースに、企業文化や経営陣のキャラクターの相性を気にすることが多かった。具体的には、経営統合に至る背景は前述の通りですが、決断する社長自身は、課長時代などから、相手と交流があり、部長→役員と上がる中で、相手のキーマンも意識的にウォッチしていて
、その中で会社や業界の将来性、危機感や互いの企業文化など、様々な会話の中で、自社と相性がよさそうな先は、どこかという視点を常に持っている印象を受けた。

ということで、経営統合相手としての決め手は、相手の企業規模や補完関係などロジックで語られる部分もあるものの、「企業文化」によるところも大きいと個人的には思う。決断時の社長も「これが私の最後の仕事。あとは次の世代に大きくしてもらう」という考えがあるケースがほとんどなので、次世代の社員にとって、ベストな相手を探すことになる。

FAとしては、トップ同士が決めた経営統合について、一番に相談を受けることができるかどうか、そこに掛かっているのは言うまでもないが。

なお、投資銀行時代に仲良い顧客から「事業提携の初期的なディスカッションを●●会社としてみたいから、面談機会をアレンジしてほしい」という類の依頼はありました。互いに面識はあるものの、真面目な話をしたことがないという理由で、面談をアレンジして、そこから統合へという流れもあります。(多くの場合、事業統合や子会社の統合といった小さな業界再編が多かったですが)

最初に長々記載したので、次回「進め方」「統合比率」「スキーム」など、M&Aのテクニカルな話をしたいと思います。

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