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化粧品業界のM&A

コラム
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今日は化粧品業界のM&Aについて、ポイントを説明したい。

【ライセンス】
化粧品は、消費者の認知度が競争の源泉になっていることから、化粧品会社名が商品ブランドより知られていないことも多々ある。化粧品専業メーカーの場合、会社名が、商品名(コーセー、ポーラなど)になっているので、シンプルでわかりやすい。IPも会社で保有していれば、通常のM&Aと同じ。

厄介なケースは、化粧品事業以外の消費財事業を行っているメーカー(花王、P&Gなど)や多くの商品ラインナップやカテゴリーをポートフォリオとして保有しているメーカー(資生堂、Roreal)であり、商品カテゴリーやラインナップごとに、ブランド名を個別に持っているケースもある。

ライセンス(特許やライセンスなど)をセットに売却してもらえるなら、問題ないが、一ブランドを事業譲渡で譲り受けたり、ドクターズコスメの場合、IP(特許やライセンスなど)が切り離されているケースがある。一ブランドの場合、付随する特許などは切り離され、買収後にライセンスフィーを支払い続けることも考えれる。ドクターズコスメの場合、ブランド名(商標権)は商品を開発したドクター保有することもあり、株式譲渡以外にライセンス交渉も別途発生することもある。

ターゲット企業がIPをライセンスインしている場合、ライセンス価値は、ライセンス料がCash outしているので、そのキャッシュベースに事業価値を算定する、という考え方になり、株式譲渡とは別の交渉事が発生する。売り手に間に入ってライセンスホルダーと交渉するか、直接交渉になるか、ケースバイケースだが、案件初期段階で、交渉の進め方をはっきりさせておくのが望ましい。

【製造拠点】
大手化粧品メーカーであれば、内製化しているケースが多いが、新興化粧品メーカーの場合、ファブレス型も多々ある。国内には、化粧品OEMメーカー(日本コルマーなど)が多く、アセットライトで化粧品を扱っているケースも多い。

買収にあっては、OEM契約の継続が前提となる場合、CoC(Change of Control)の同意が必須になるので、これはSPAの前提条件となる。また、OEMでの製造を内製化するにしても、買い手にとってはDDでのレシピ公開がマストになるので、焦点の一つとなる。なお、レシピを公開してもらい、その通りに製造しても化粧品は同じ商品にはならない、というのは実際のところ。料理と同じで作り方(材料の入れる手順や加工方法など)で全く同じにはならないようなので、内製化にあたってもその移行期間の間の技術支援をTSAの一つとして入れてもらうのも、交渉材料となる。

また、レシピの中で、使用されている原材料が、買い手の事業方針に合うか、或いは他国でも使用可能かなど、色々と調べることはある。買い手が、環境にやさしく、自然派に近い化粧品を扱っている中で、レシピの中に石油由来の原材料が含まれている場合、或いは、海外(特に欧州)では発がん性物質の恐れがある原料として使用が禁止されている場合(でも日本では使用OKのパターンがある)、買い手の欧州拠点では販売できないなど、色々と課題が出てくることもある。案件の根幹にも関わるので、DDの早期段階で確認したいところ。

【越境EC/中国売上/インバウンド】
コロナの影響で、成長戦略と見ていた化粧品業界の成長ドライバーが変わってきている。在宅中心の生活環境に一変しことで、売れ筋の商品カテゴリーが大きく変化したり、インバウンドの完全消滅、ECチャネル販売の急増、中国の越境EC規制の改正、W11の熱狂への規制など、事業環境が大きく変わってきている、売却を考えた場合の事業計画、または買収を考えた場合の買収後の成長シナリオ、事業計画を考えると、コロナそれ以外のマクロの影響を踏まえ、M&Aタイミングや買収対象には、慎重に考えてる必要がある。

以上、化粧品業界のM&Aに関するポイントでした。

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