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株式交換に関する実務的ポイント

M&Aについて
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 組織再編でよく使われるスキームである株式交換について、実務的な視点でまとめたい。なるべく教科書では、焦点が当てられない実務的な観点でまとめたいので、体系的に株式交換を知りたい方は、他のサイトなどを見られることをお勧めします。

1. 100%子会社化のみに使える手法
 株式交換は、他の会社を自社の完全子会社にするための手法であり、100%子会社化するスキームのこと。
従って67%取得したい場合、株式交換は使えない。あくまでも、100%化の場合のみ使われる。でも、通常の買収と違って、お金を使わず自社の株式を対価と使うので、財務負担はない。一方で、株式を発行するので、既存株主には希薄化が発生するが、保有比率の低下リスクを除けば、少数株主に対しては、EPSを買収前より上げれば、問題ない。
 これまでの印象として、希薄化を必要以上に恐れる経営者が多かったが、恐らく在任期間中にシナジーを創出して、希薄化以上にEPSを上げる自信がないからだと思う。Risk takingできない、固い戦略しか取れない経営者が多かったという事だろう。なお、株を使って67%取得したい場合、現金対価であれば株式譲渡、株式対価であれば、株式交付(但し、子会社化のために使われる制度で既に子会社である会社には使えない)。株式交付制度は、最近ようやく会社法・税制とも整備できたので、今後増える予感。

2. 株主総会の特別決議
 被買収側(100%化される会社)は、株主総会での特別決議が必要。総議決権の2/3の賛成票を取れば、子会社化でき、少数株主もスクイーズアウトできる。逆に言うと、総会1発勝負なので、票読みが微妙な時は、株式交換を使うべきか、悩ましいところ。反対株主の買取請求も気になるが、適切な交換比率で実施した場合、交換比率で買取可能なので、あまり気にする必要はない。被買収側の視点は違うところにあったりするので、後段「8. B社社長の視点」を参照。

3. DD方法
 交換比率を決めるには、両者の株価算定が必要となる。例えば、B社がA社の完全子会社になる場合、A社:B社=1:0.5 というように、B社株主はその比率で保有株をA社株に交換させられるが、比率算出にあたっては、A社200億円、B社100億円、というように、両者の株価をそれぞれ算定しなければならない。株式譲渡の場合、B社株価の絶対評価なので、A社の株価は気にしなくて良いが、株式交換は両者の相対比較なので、両者の株価算定が必要となる。となると、DDも基本には両者ともクロスで実施することになる。但し、実務上は、A社→B社はフルDDだが、B社→A社は簡易DDとなる。

4. DD内容
 B社→A社は簡易DDという点については、結論としてA社のDCF評価を行わないケースが多いことが挙げられる。A社がB社を株式交換で完全子会社化する前提として、そもそもA社の方が規模が大きいケースが多い。また、A社をフルDDしようとしても大がかりであり、全社巻き込んで実施する案件でもないことが多い(A社の方は株主総会不要の簡易交換のケースも多い)。その場合、A社が上場企業であれば、株価ベースでの評価、非上場でもマルチプル程度で終わらせるケースがほとんど。DCFを使わないので、コントロールプレミアムが織り込まれず、A社株主に不利になる、という指摘も尤もだが、希薄化を考えても然程影響がないことが多く、簡易交換であれば、尚更。となると、A社のProjection(事業計画)も不要になり、用意する資料も上場企業であれば公開情報ベース。非上場でも、事業報告書+決算書程度。B社としては、簿外債務など、株価に織り込まれていない非公開の重要情報があるかというネガティブチェックに留まる(基本、そんなものはないが、仮にあった場合は、早々に公開して、株価に織り込ませる)。一方で、B社はフルDDさせられ、DCFでの評価となる。

5. 基本合意
 株式交換を含む組織再編で最初に話題になるのが、基本合意。守秘義務や他社と同様の組織再編の協議を行わないなどは、法的拘束力をもたせるが、それ以外は、DD前であり、法的拘束力を持たせない合意書であり、統合形態・目的・スケジュールなど、基本事項を設ける。従って、最も株価インパクトのある株式交換は、ここではまだ入れない。なお、ケースによってステークホルダーの中で生じる懸念項目については、敢えて方針を入れておくことはよくある。例えば、ブランドの取扱(BtoC企業であれば尚更)、人事など。何が、基本合意の重要論点かというと、開示有無。私の記憶では、大型の経営統合や株式交換であれば、ほとんどのケースで基本合意で最初に開示を行い、DD後に株式交換契約を締結する。理由は、情報漏洩リスクの解消。基本合意まではPJメンバー間のごく限られた関係者の案件であるが、DDフェーズになると、社内関係部署が多くなり、弁護士・会計士・税理士など外部専門家も増えることから、情報漏洩リスクが相応に高まり、管理できない状態になる。なお、稀に基本合意での公表なしに、一発で株式交換契約締結を行う組織再編もある。

6. プレミアム
 一般的に、通常の現金対価の会社買収と比べ、株式交換比率に織り込まれるプレミアムは小さいと言われる。ざっくり約半分と言ったところ。例えば、TOBの場合、プレミアムは+40-50%と言われるが、株式交換におけるプレミアムは約20%前後。意外に知られていない。これは、ガラパゴス日本だけと思われがちだが、実はグローバルで株式対価の買収におけるプレミアムを見ると、同じ水準のプレミアムとなる。2016年あたりに、オアシスがその低いプレミアムに目を付け、アルパインの株式を買い集めたが、実はひっくり返せなかった。言われているロジックとして、TOBは現金での強制的買収であり、B社株主は売却するか、TOBに反対して阻止にするしか、選択肢がない(TOB阻止が無理なら、買取請求制度を利用する)。一方で、株式交換の場合、上場企業であれば、売りたければ、市場で売却するも良し、両者が一緒になりシナジーが発揮され、1+1が2以上になるのであれば、交換され新たに取得するA社株式を保有し続ければ良い。TOBの場合、A社株を保有し続けたくとも、強制的に現金化されること、売却資金でA社株式を購入しようにも、B社株式売却に伴う税金分だけ目減りするなど、なかなか難しい。その分をプレミアムと言う形で支払っているというロジック。

7. 株式交換比率
 実は、基本合意を発表すると、B社株式はプレミアムを取りにいくため、翌日には+20-25%上昇して、ピタッと張り付く。なお、価格に対してではなく、株式比率に対してのプレミアムなので、B社株価が張り付くということではなく、A社株式とB社株式がそのプレミアム分を乗せた上で、連動して動くという事。プレミアムの計算について、A社:B社=200億円:100億円の場合、プレミアム30%乗せると、A社:B社=200億円:130億円。つまり、1:0.5の比率が、1:0.65になるイメージ。株式交換契約が締結され、両者の合意した交換比率が発表されると、その比率がピッタリ固定して動く。例えば、A社株価は日々動くが、それに応じてB社株価は、1:0.65の比率で連動することになる。逆に、B社株価が0.65より大きく動いている場合、すなわちB社株価は相対的に高く買われていることから、アクティビストなど、意図的に高い価格でB社株式を市場で買い集めていることになるので、実務者は日々の終値ベースの比率を算出しながら、動きに変化がないかウォッチする必要がある。

8. B社社長の視点
 株式交換による完全子会社化の場合、被買収側の社長からよく聞かれることとして、「この交換比率で株主を説得できるか不安」といった質問を受けます。特に、上場子会社は市場で放置されているケースも多く、PBRが0.5倍、プレミアム入れても0.7倍といった時に、交換比率を是とする意見をどう判断するか、悩まれるケースが多い。前提として、株式交換を使って完全子会社にする、ということは、上記2.で記載したように、特別決議を通すのに相応の確度がある、つまり既に子会社か、それなりの出資比率を有する親会社等であるケースが多い。となると、被買収側の社長は、親会社から派遣された雇われ社長であり、自ら親会社傘下に入って、企業価値を増大したいと言った野望はなく、言われたことをミスなく、順調に終わらせることがミッションであり、親会社に盾突く、ましてや交換比率交渉で0.01%でも多く自分の株主の利益を確保しようと動く社長はまずいない。しいて言うなら、「どこまでやれば、株主は満足してもらえるか」といった視点。株主から及第点をもらえるくらいで良いと思っている。ただ、流石にPBR1倍を下回るのは、説明つかない(そうなら、傘下に入るのではなく、今すぐ廃業して、残った利益を分けてもらった方が良いという発想)ので、どうしたら良いかという相談がよくある。個人的には、PBR1倍を下回ると言っても純資産価値と同じ金額で清算されることはまずないので、清算した方が良いという意見はあまり気にしなくていい。むしろ、自分の在任期間中の株価水準、比率の前提となる算定評価がその在任期間中の株価推移の最大値を上回るか、など、自分中心で考えていいと伝えています。

9. その他
 テクニカルな話として、端株ができないような交換比率にする必要がある。1単元100株なら、小数点第2位まで、1単元1,000株なら、小数点第3位まで、など。
 また、通常のM&Aと違い、最終契約である株式交換契約に表明保証がほとんど付けられない。理由は、売り手が少数株主になるためで、彼らに補償を補償を求めることができないから。
 なお、少数株主の保護の観点から、完全子会社化の際には、第三者委員会の設置が必要となったり、今後はマーケットチェックが必要となったりするかもしれない。また、第三者委員会は社外取締役が中心となって関わるといった話になると、相応の人物を社外取締役として招聘する必要がある。


 上記以外でも、実務的に抑えるポイントがあれば、随時追加したい。株式交換を実施・検討される際、これらの点を抑えて頂ければ、幸いです。

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