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介護業界のM&A

M&Aについて

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最近、介護関連のM&Aに関与することもあり、介護業界におけるM&Aの動向・2023年のM&A事例をまとめてみた。

介護業界におけるM&A(合併および買収)は、高齢者人口の増加や政府による社会保障政策の変化などの影響を受けて、今後もM&A活動が活発に行われると予想されます。以下、介護業界のM&Aに関するポイントをいくつか説明します。


①市場拡大

・高齢者人口の増加: 令和4年3月に政府が発表した「人口の推移、社会保障費」によると、日本の総人口は減少局面に入っている一方で、65歳以上の人口増加率が緩やかにはなるものの、2040年まで増加すると予想されている。

・介護給付費の増加: 高齢者の数が増加する予測であるため、介護施設やサービスへの重要が今後更に高まるものと思われます。また、それに応じて社会保障給付費に占める介護給付費の割合も増加すると想定され、2021年度12.7兆円2040年度には24.6兆円まで伸長するとみられる。​


②サービスの多様化・高度化

介護サービスの多様化: 利用者ニーズに合わせたケアマネジメントの充実・強化、それに合わせた介護サービスの多様化もあり、事業者は、変化する政府の社会保障政策への対応を迫られる。その動きに対応できない事業者は経営の不安定化に繋がり、サービスの質の維持も難しくなる。一方で、幅広い利用者ニーズに対応できる事業者は、より競争力を高められるという循環が生まれるものと思われる。

介護サービスの高度化: 介護職員は、高度な専門知識と資格を要することが多い。また、介護報酬改定によって、従来は医療従事者のみ許された、特定の疾患に対する医療行為(喀痰吸引など)を、研修を受けた上で介護職員でも行えるようになる可能性があり、対応できる事業者は、特定事業所加算が可能となる。このように研修・教育体制が充実できる事業者が、利益を享受できるような状況に、介護業界は変わって行くものと思われる。


③介護職員の確保

高齢化と少子化: 日本の人口構造からして、今後も介護を必要とする高齢者が増え続け、介護を担う若者が減っていくという悪循環が続く。

働き方改革: 他の業界同様に、介護現場でも時間外労働は上限が規定され、違反すると罰則規定が適用される。事業者としては、長時間勤務で賃金を多く払うというより、待遇改善のための資格やスキルを取得する制度を設けるなど、より魅力的な職場環境を整え、良い人材の確保を務めることが求められる。


④ICT対応

政府の後押し: 厚生労働省も介護現場の業務負担軽減・人材不足対応・社会保障費の抑制を目的に、ICT化を促進しており、導入支援を積極的に行っている。介護ソフト(情報共有システム、コミュニケーションツール、記録システム、勤怠管理・給与計算システム、請求システム、見守りシステム、介護システムなど)やタブレット端末の導入支援・補助制度の充実、手引書の交付やガイドラインの作成、導入・普及セミナー実施やYouTubeでの配信など、様々な施策を提供している。

ICT企業の新規参入: 介護ソフト・システム開発企業、クラウド導入企業、AI・ロボット開発企業、SNSサービス企業など、これからの市場拡大や政府の支援を追い風に様々な企業が介護業界にシステム・ICT領域で参入してきている。また、中には介護サービス企業が、介護専門のソフトシステム開発企業を買収し、ICTサービサーとして他の介護企業にサービスを広げるパターンも出てきている。


上記の業界環境を踏まえると、サービスの多様化・高度化への対応、人手不足や後継者不足への対処、ICTや老朽化施設への投資の必要性といった各課題解消を必要とする、売り手側のニーズと、施設の獲得やサービスの拡充、成長産業への新規参入、事業運営の更なる効率化という買い手側のニーズが合致することで、介護業界のM&Aは更に増加するとみられる。

M&Aによって事業者の経営が安定すれば、介護サービスの質の向上も期待でき、利用者の安心した老後生活に繋がるため、介護業界全体としては望ましいと考えられる。 

なお、事業者間の文化の違いによる利用者への悪影響、地域ごとの特殊性の存在、M&A多発によるサービスの悪化など、当然ながらマイナス面もあるため、許認可が必要な事業でもある介護ビジネスにおいては、行政側もM&Aによるそれらネガティブな影響に対して、注視していくことになるだろう。


<2023年の介護業界におけるM&A事例>

8/18 QLSホールディングス(大阪:7075)による㈱和み(埼玉:介護付き有料老人ホーム)と㈱ふれあいタウン(石川:デイサービス)の買収
7/31 ニチイ学館(東京)による㈱在宅介護サービスたんぽぽ(岡山:グループホーム・小規模多機能ホーム)の買収
7/28 エフビー介護サービス(長野:9220)によるスマートケアタウン㈱(長野:小規模多機能型居宅介護)の買収
7/20 メドレー(東京:4480)による㈱GCM(東京:医療機関・介護施設等向けファクタリング)の買収
7/5 土屋(岡山:訪問介護)による㈱ゆう(宮崎:デイサービス・訪問看護・有料老人ホーム)の子会社化
7/3 ニチイ学館(東京)、㈲辛卯から認知症対応型共同生活介護「グループホーム 和みの家」事業を譲受
5/24 ソラスト(東京:6197)によるJR西日本(9021)子会社であるポシブル医科学㈱(大阪:在宅介護等)の買収
5/10 土屋(岡山:訪問介護)による㈲ノーマルライフ(大阪:デイサービス等)の子会社化
5/2 SOMPOケア(東京)による伊田テクノスの子会社である㈱みなけあ新座(埼玉:サ高住等)の買収
5/1 トライト(大阪:9164)による㈱bright vie(名古屋:介護・医療向けシステム開発)の買収
4/28 ソラスト(東京:6197)による総合ケアネットワーク㈱(福岡:住宅型有料老人ホーム)を買収
4/6 SOMPOケアによる中国電力(広島:9504)子会社である㈱エネルギア介護サービス(広島:介護付有料老人ホーム等)の買収
3/28 Leo Sophia Group傘下のL medical(東京)による㈱VISION(埼玉:ホスピス事業)の買収
3/15 ニチイ学館(東京)による㈲松本から特定施設入居者生活介護事業所「介護付有料老人ホーム ラウンドコスモス大宮」事業を譲受
3/6 総合メディカル(東京)、東京リネンサービス㈱(東京:医療・介護福祉施設向けリネンサービス)を買収
2/14 エクサウィザーズ(東京:4259)による介護事業者向けサービス「CareWiz ハナスト」事業の㈱ケアコネクトジャパン(静岡:介護ソフト・システム開発/CCJ)への譲渡。なお、CCJ同社株式取得を検討
1/17 揚工舎(東京:6576)による㈱アルティーユスタッフ(東京:看護師・介護士派遣事業)の買収
1/16 ケア21(大阪:2373)によるソフトケア宮城㈱の訪問介護事業を譲受

<過去の関連M&Aコラム>
買い手のためのM&A成功のポイント①
M&Aプロセスのポイント(売り手向け):①案件開始前
NDA:秘密保持契約書に関するポイント

 

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