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M&Aアドバイザリー契約における注意点

M&Aについて
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M&A案件を進める際、M&Aアドバイザーとアドバイザリー契約を締結することになるが、その際に気を付けておくべきポイントを当事者として、ここに紹介したい。特有の条項もあるので、注意点だけでなく、その背景や理由などもご紹介したい。

まず、M&Aアドバイザーは、M&A仲介会社フィナンシャル・アドバイザー(FA)の大きく二つある。詳細は、こちら(過去のM&Aコラム「M&A仲介とフィナンシャル・アドバイザーの違い」)をご覧いただきたい。

いずれのM&Aアドバイザーであっても、彼らとアドバイザリー契約を結ぶことになり、彼らの役割が違うだけで、同じような契約内容なので、一括りでポイントを紹介したい。


①アドバイザリー手数料

まず、一番重要なポイント。報酬額も気になるが、タイミングも業者によって異なる。

(1)報酬体系

未上場企業の場合、M&A仲介業者もFAも、レーマン方式
を採用する業者が多い。私自身は、長年M&Aアドバイザーとして関わってきて、今もこれは高すぎるという意識があるが、クライアントも納得しているのであれば、特にコメントはない。

【レーマン方式】取引金額/手数料率: 
・0~5億円: 5%
・5~10億円: 4%
・10~50億円: 3%
・50~100億円: 2%
・100億円~  : 1%


計算としては、積み上げ方式となる。具体的に、取引金額25億円のM&Aの場合、支払い報酬額は、
・5億円 × 5% = 25百万円 ※0~5億円の部分は5%
・5億円 × 4% = 20百万円 ※5~10億円の部分は4%
・15億円 × 3% = 45百万円 ※10~50億円の部分は3%
(合計)25百万円+20百万円+45百万円 = 90百万円となり、全体的には3.6%(=90百万円/36億円)の手数料率となる。

構図としては、取引金額が大きくなると、手数料額も大きくなり、取引金額が小さいほど、料率は上がる仕組み。売り手FAであれば、頑張って高く売却するほど、手数料額が大きくなる。なお、取引金額の大小関わらず、一定の事務負担はかかるので、最低報酬金額(10百万円など)を設けるケースは多い

気になるのは、レーマン方式の手数料率自体が高いという点と、クライアントに安く買わせるアドバイスを行う買い手FAでも高ければ高いほど手数料が上がるという仕組みも、気になる。なお、M&A仲介会社は、レーマン方式で買い手・売り手双方から両取りする仕組みとなり、先の取引金額25億円の場合、双方から90百万円ずつ、計1.8億円をもらう計算となり、手数料率は合計7.2%(=1.8億円/36億円)となる。なお、最低手数料額(業者によりまちまち。数百万円~20百万円など)を設けている、

FAの場合、上場会社相手にレーマン方式を採用することは、今の時代まずない。基本的には、取引金額(=企業価値)1%~2%が一般的であり、これはグローバル共通。契約としては、レーマン方式のような方程式でFA契約書に規定するのではなく、想定取引金額から手数料率をもとに、報酬を金額として規定し、固定する場合が多い(売り手FAの場合、インセンティブ報酬として、ある一定金額以上の場合、その超過額に対し、一定の手数料をもらう仕組みを入れる場合もある)
また、各FAも最低手数料額(日系大手銀行・証券であれば、50百万円~1億円、外資系であれば2~3億円。但し、クライアントとの取引関係度により変動)を設けており、一定の取引金額(= 企業価値)以上でないと、案件を受けないケースもある。ブティック系M&A業者であれば、もう少し最低報酬額が下がり、FAS(大手会計事務所のFA業務)では、手数料率と最低報酬額も下がるイメージ。各M&Aアドバイザーのメリット・デメリットについては、こちら(会社売却の相談先は? ④外部専門家)を参照。

ここで取引金額は、株式価値のことか、企業価値のことか、異なるケースがある。株式価値とは、株式の譲渡対価であり、実際に買い手が株式を取得する際に売り手に支払う金額のこと。一方で、企業価値は、株式価値に負債額も加算され、株式価値よりも大きな金額となるので、この違いだけで、更に手数料額が大きく異なるため、要注意である。ちなみに、FAでは、基本的に企業価値を採用しており、M&A仲介会社の多くも企業価値だが、中には、株式価値を採用する業者もある。

ところで、私の知る限り、レーマン方式は、2000年以前に海外で使われていた手数料方式を日本に持ち込み、初期段階は日本でも上場会社に使われていたが、高すぎるということで、2000年前半には、早々に業界からなくなった。それが、2010年以降のM&A仲介会社中心に未上場企業のM&Aが急成長する中で、使われるようになり、復活してきた。今は、レーマン方式がさも当たり前に言われているが、昔からいる感覚では、日本の未上場企業のオーナーは、騙され過ぎているという印象。是非、M&Aが以前から盛んにおこなわれている欧米の状況も知っていただきたい。ちなみに、私の知る限り、M&A仲介というM&A専門家は、日本(や新興市場)特有の存在であり、企業における利益相反への意識が高い欧米では、ほとんど見ない。

最後に、M&A専門家や案件に係る諸経費について、これらは報酬とは別にクライアント側が支払う構図になる。例えば、M&A専門家の出張費、案件に関するその他専門家への顧問料弁護士・税理士・会計士等)、中には印刷代や通信費も請求されることがあるので、注意が必要。この点も確りと話し合うことが重要。

(2)支払タイミング

タイミングとしては、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬の4種類ある。

着手金:  アドバイザリー契約締結時に、手付金として2~5百万円を支払う。今からクライアントのために働くので、一部固定費を支払うというイメージ。驚くことに、M&A仲介会社の中には、買い手に対して、社名含めた少し詳しい売却案件情報を開示するだけで、情報提供料として請求する業者もいると耳にしたことがあり、注意が必要。

月額報酬: 月払いの報酬でリテーナーと呼ばれます。こちらも着手金同様に固定費見合いという位置付けです。時間がかかりそうな案件M&Aが完了しなさそうな案件には、敢えてこのような報酬体系で、取れるうちに手数料を稼ぐと考えるM&A専門家も中にはいる可能性もあるので、注意が必要です。逆に、M&A専門家としては急ぐメリットも減るので、ゆったり進めようとする気持ちも出てきます。

中間報酬: 一次意向表明書(LOI)の受領時売り手の場合)/提出時買い手の場合)、又は基本合意書(MOU)締結時に報酬額の10~20%。なお、二次意向表明書の受領時/提出時にも別途中間報酬を求める業者もいる(同様に報酬額の10~20%)。

成功報酬: 成功報酬も最終契約(株式譲渡契約書)締結時クロージング時(買い手から売り手への買収金額の支払時)2つのタイミングがある。最終的に支払う成功報酬額は、上記レーマン方式での総額より既に支払った着手金・月額報酬・中間報酬を控除した残りの報酬額となることが、一般的ですが、異なる場合もありますので、確認が必要です(少なくとも私は経験したことがないですが、悪質なM&A専門家はやりかねないと思います)。

なお、完全成功報酬型を表明している会社でも、実際クロージング時ではなく、最終契約時に請求する場合もあり、稀なケースとして最終契約を締結しても クロージングしない案件もあるので、要注意。

また、着手金・中間報酬・成功報酬のいずれの手数料も原則支払った後は、一切返金を受け付けません。例えば、着手金・中間報酬を支払った後、最終契約交渉の際に、何らかの事情で売り手が案件を停止したとしても、M&A専門業者は、顧客である買い手に、既に支払った手数料の返金を対応することはありません。

ちなみに、当社の場合は、FA業務しか行わず(片方からしか手数料を頂かず)、クロージング時のみ完全成功報酬型を採用しており、買い手・売り手のどちらか一方から、取引金額(=企業価値)の1%~2%(最低報酬額は500万円)を頂く報酬体系を採用している。

(3)テール条項

テール条項とは、一度破談したM&A案件が、何らかの形で復活し、2~3年という有効期間内に成約した場合でも、M&A業者に報酬を支払わなければならないという取り決め。復活後のM&Aプロセスについて、M&A専門業者が一切関与していない、相対取引であったとしても、破断した際の最初のプロセスの貢献に対して報酬を支払うという仕組み。もし、この状況を求めてきた場合、個別事情を勘案しながら、弁護士や他の専門業者に相談することもお勧めしたい。


②専任条項

これは、選定したM&A専門家以外のM&A仲介会社やFAを採用しては、駄目という条項。ほとんどのM&A仲介会社やFAから要求され、契約書から削除されることに非常に抵抗されます

クライアントとしてのメリットは、以下の通り。
・情報漏洩リスクが下がる ⇒ M&A専門家の1社なので、検討中の売却・買収案件の情報管理がしやすくなる。
・M&A専門家内での優先度が高くなる ⇒ 専属となると、M&A専門家の中での案件優先度が上がるため、成約確度が上がる可能性もある。

一方で、デメリットは、
・セカンドオピニオンが取れない ⇒ M&A業者の能力やアドバイス力に不信感を抱いていも、他の専門家に相談できない。
・幅広く買い手にアプローチができない ⇒ M&A専門家ごとに、買い手との関係の距離に違いがあり、ベストな買い手候補者にアプローチできない可能性もある。

M&A専門家がこの条項を入れたがる理由は、以下の通り。
(1)同業から横やりを入れられることを嫌がる 
(2)
他のM&A専門家によって最終的に横取りされ労力が水の泡となる
(3)他のM&A専門家が別の買い手と協議している場合、案件の全体像が見えず適切なアドバイスが提供できない など。

正直なところ、この条項に反して、別のM&A専門家にセカンドオピニオンを依頼し契約違反をしても、真っ当な理由があって相当な悪意がない限り、M&A専門家としては何もできない気はします。狙いとしては、抑止力を維持しておく効果を明文化しておくことにあると思います。また、アドバイザリー契約締結後に信頼がおけないM&A専門家については、契約解除を行い、別の専門家を選定する方が良いかもしれません。

ちなみに弊社では、専属条項に対してはニュートラルです。顧客/弊社の事情、個別案件を踏まえ、顧客と確り協議した上で、織り込むか否かを検討します。但し、クライアントが他の専門家にセカンドオピニオンを依頼するという状況は、信頼を勝ち得ていない証拠であり、そのような事態にならないように、日々緊張感をもって顧客からの信頼を勝ち取ることが重要と考えています。なお、設けない場合、上記(2)(3)のような事態は、状況によって、ケース分けをして、報酬を規定するようにしています。


③アドバイザリー業務内容

次にされるのが、M&A専門業者のサービス内容。ここは、先に述べたようにM&A仲介会社とFAでは、内容が変わってくる。当社は、FAしかやらないが、例えば以下のような項目をアドバイスすることとなる。

(1)売却戦略の立案
(2)M&Aストラクチャー・手法検討
(3)M&A手続き及びスケジュール策定
(4)案件履行に関する助言及び支援
(5)買い手候補の探索及び紹介
(6)デュー・ディリジェンス支援
(7)対象企業の企業価値又は株式価値の評価
(8)取引相手方との協議・条件交渉に関する助言・支援
(9)M&A推進に必要な書類作成、契約書類等の作成・確定に関する支援
(10)上記の業務に付随関連して顧客にとって有益又は必要なその他の業務


上記内容は、フルスコープベースだが、クライアントや案件によっては、サービス内容を限定したりすることもあるので、それは個別に相談して、ジョブスコープを決めることになる。なお、株式価値の評価・条件交渉に関する助言・支援など、M&A専門業者が行うと思っていた業務が、実はサービス対象外と言われることも多いので、注意が必要。また、M&A仲介会社が、取引相手方との条件交渉を行う条項が入っている場合、これは完全に利益相反となり、お手盛りができる状況を作るだけなので、要注意である。


④直接交渉の禁止

これは、買い手と売り手の両当事者が、直接の交渉を禁ずる条項。FAが介在するM&Aプロセスでは、有り得ない条項であるが、M&A仲介会社の場合、買い手・売り手双方に対して、成約のために一定の条件のもと直接交渉を禁止して、自らが間を取り持つこともあると聞くが、クライアントの意にそぐわない結果に纏める危険もあるので、要注意。なお、FAの場合、直接交渉を行う場合、原則CCとしてFAを入れてもらい、交渉状況がどのようになっているか、逐一共有できるようにはお願いする。但し、大企業の重要案件になると、裏でトップ同士が最後決めることもあるので、その場合、事後的に結果を聞くことになるが、トップ同士が対面するまでの交渉のお膳立てや詰めの作業は、双方の担当者・FAベースで1つずつ確認しながら行うのが一般的。


⑤再委託条項

M&A専門業者が別の第三者にアドバイザリー業務の一部を委託する条項。評価したM&A専門業者に依頼する予定が、実は裏で再委託され、実際のアドバイザーサービスは別の者が担当するということも有り得る。もし再委託条項がある場合、その再委託先は誰か、直接会って確認したり、事前通知・同意の制限を設けたり、事情を確り確認しておく必要がある。株式価値算定は別の子会社が担当したり、クロスボーダー案件であれば、グループ会社の海外子会社の担当もチームに加わったり、色々な再委託のパターンがあるので、それらを踏まえて、具体的に確認しておくことを勧める。


⑥特約条項

M&A案件に関連して、付帯条項を求められるケースもある。例えば、買い手FAの場合、M&A案件が成約した際に、(1)案件に関連するファイナンス(資金調達)を市場から行う場合、FAも資金提供者の1社として選定する、(2)案件に関連して、為替やデリバティブを必要とする場合、FAもそのサービス提供者の1社として選定する など。FA報酬のディスカウントを受け入れた分、別のビジネスを依頼するという趣旨で織り込むことを求められるケースもある。


⑦案件の定義

どの契約にも当てはまるが、個別案件におけるアドバイザリー契約であれば、まずその案件を定義する。例えば、「本案件とは、売主である●●●●氏が保有する株式会社■■■■の普通株式全ての譲渡のことをいう。」のような感じ。

逆にこれがなく、「本案件とは、株式会社■■■■における株式譲渡、事業譲渡、組織再編(合併や会社分割等)、資本提携その他これらに関連する企業提携のことをいう。」となると、包括契約となり、全てのM&A案件をそのM&A専門家に相談することになるので、注意が必要となる。(このようなことは、一般的に起こり得ないが)


⑧補償

M&A専門業者が提供したサービスに起因して、クライアントが第三者から責任追及を受けた場合、そのM&A業者に故意又は重過失があれば、補償を請求できる、というのが、一般的な内容。重過失を過失に程度を下げるよう依頼されることがあるが、これはM&A専門家としてかなりのリスクを負うので、受け入れられない内容。M&A専門家の中には、仮に故意又は重過失によって、クライアントに損害を与えた場合、全額補償せず、クライアントから頂いた報酬額を上限として補償するという制限を求められることもある。


⑨有効期間

アドバイザリー契約の有効期間も案件スケジュールと照らし合わせて決めることになるが、通常は1年契約。自動更新を入れるかどうかは、案件次第だが、いつでも相手方の事前通知により、解約できる条項を入れておく方が良い。もし相手方の会社倒産などの事由がないとなると、M&A専門業者との契約を打ち切りたくても解約できなくなるので、要注意。


その他、秘密保持義務などもあるが、一般的内容であるため、割愛する。

M&A案件は、大きな金額が動く取引であり、オーナー社長にとって、会社売却は最後の大仕事になる可能性もあるので、慎重に様々な方に相談しながら、M&A専門業者の選定とアドバイザリー契約に締結されることを願います。


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